線形代数のまとめ その2(写像について)

その1の続き

その1では線形代数の授業で雰囲気で覚えていた線形空間や基底についてメモった

小学校や中学校で方眼紙を使ったことがあると思うが、一つの四角のマスが長さ 1cm を表しているとして

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この方眼紙においては、一つの四角のマスの横({ \displaystyle \vec{e_1}})と縦({ \displaystyle \vec{e_2}})があるベクトル { \displaystyle \vec{v}} に行くための基準となってくれる。

上の画像にあるベクトル { \displaystyle \vec{v}} への行き先は基準を使って

{ \displaystyle \vec{v} = 3\vec{e_1} + 2\vec{e_2}}

と書き表せる

基準となる1組のベクトルのことが基底だった。ここでは方眼紙の縦と横を表せればいいので基底の組は({ \displaystyle \vec{e_1}},{ \displaystyle \vec{e_2}})であり、組の要素である{ \displaystyle \vec{e_1}}とかが基底ベクトルだった。

{ \displaystyle \vec{v} = 3\vec{e_1} + 2\vec{e_2}}のような{ \displaystyle \vec{v}}もベクトルの足し合わせでできたベクトルなので、もちろん足し算と定数倍はできる。

今回は授業でよく聞いたけどイメージが湧かない写像をメモする

ある行列 A があるとする
$$ A = \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 3 \end{pmatrix} $$

写像というのは{ \displaystyle \boldsymbol{y} = A \boldsymbol{x}}のようにベクトル{ \displaystyle \boldsymbol{x}}を行列Aで別のベクトル{ \displaystyle \boldsymbol{y}}に移すこと
(m,n)行列Aのとき、その行列は n次元空間のものを m次元空間に移す写像を表す

試しにベクトル{ \displaystyle \vec{v} = 3\vec{e_1} + 2\vec{e_2}}を上の(2,2)行列Aで写像してみることにする
{ \displaystyle \boldsymbol{x}}の部分が{ \displaystyle \vec{v}}に変わるので計算式は以下のようになる
$$ \boldsymbol{y} = \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 3 \\ 2 \end{pmatrix} $$

{ \displaystyle \boldsymbol{y}}はこのとき { \displaystyle (8,9)^{T}}になる。
途中式を書いて基底がどうなったかを確認する。そもそも{ \displaystyle (3,2)^{T}}{ \displaystyle \vec{v} = 3\vec{e_1} + 2\vec{e_2}}を表したものだから
$$ \begin{pmatrix} 3 \\ 2 \end{pmatrix} = 3\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix} + 2\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}$$

{ \displaystyle \boldsymbol{y} = A \boldsymbol{x}}を変形すると
$$ \boldsymbol{y} = \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 3\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix} + 2\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix} \end{pmatrix} $$

分配法則(定数は前に持ってくる)から
$$ \boldsymbol{y} = 3 \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix} + 2 \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix} $$

$$ \boldsymbol{y} = 3 \begin{pmatrix} 2 \\ 1 \end{pmatrix} + 2 \begin{pmatrix} 1 \\ 3 \end{pmatrix} $$ $$ = \begin{pmatrix} 6 \\ 3 \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 2 \\ 6 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 8 \\ 9 \end{pmatrix} $$

分配法則で計算したけど最終的な答えは{ \displaystyle (8,9)^{T}}と一致したから問題なし。大事なのは基底を表している部分
$$ \boldsymbol{y} = 3 \begin{pmatrix} 2 \\ 1 \end{pmatrix} + 2 \begin{pmatrix} 1 \\ 3 \end{pmatrix} $$
最初の基底と変わっている。同じじゃない
定数は無視して、{ \displaystyle \vec{e_1} = (1,0)^{T}}{ \displaystyle \vec{e_1^{\prime}} = (2,1)^{T}}に、{ \displaystyle \vec{e_2} = (0,1)^{T}}{ \displaystyle \vec{e_2^{\prime}} = (1,3)^{T}}になってる

元の基底をプロットすると
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{ \displaystyle \boldsymbol{y} = A \boldsymbol{x}}をした後の基底をプロットすると

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元の行き先{ \displaystyle \vec{v}}はかなり遠くに移された。
上のことから行列Aは元の基底の移り先を表しているとも言える。(Aの第一列が{ \displaystyle \vec{e_1^{\prime}}}、第二列目が{ \displaystyle \vec{e_2^{\prime}}}に対応している)

人間、一度は故郷を離れることがあると思う。

たまに故郷に戻りたくなったりしないだろうか

つまり{ \displaystyle \boldsymbol{y} = A \boldsymbol{x}}として移った{ \displaystyle \boldsymbol{y}}から{ \displaystyle \boldsymbol{x}}に戻りたいということ。これも同じように何かしらの行列Pで写像して基底の移り先を教えてあげればいいはず
よく聞いた逆行列というのがこれで、ある正方行列((n,n)行列ということ)Aに対してその逆写像に対応する行列をAの逆行列という

その1のときに基底の表し方が1通りでいけない理由はこの逆行列のことを考えると、2通りあったらどっちへ戻ればいいかわかんなくなって困るというのがわかる

じゃあ正方行列でないといけない理由は?

(2,3)行列Aでの写像を考える。これは3次元のものを2次元空間に写像する。
3次元という立体のような空間で表されるものを2次元という平面の空間に移したら立体らしさの情報が欠落してしまう。
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上の画像でいうなら黄緑の面とオレンジの面に存在するベクトルをそれぞれ{ \displaystyle \vec{a}}{ \displaystyle \vec{b}}また({ \displaystyle \vec{a} ≠ \vec{b}})とする。画像の写像先を見ると同じ x = p という同じ移り先にいることになっている。これは「2通りあったらどっちへ戻ればいいかわかんなくなって困る」という状態になってしまった。
基底という言葉を使えば立体らしさを表してくれる基底の組の中にある基底ベクトルの情報が写像によって失われてしまう感じかな

(3,2)行列のように2次元のものを3次元の空間に写像したらどうなるか
前者の場合と違って次元が増えるので情報が欠落することはない
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でも移り先の3次元空間に存在する全てのベクトルをカバーできていないのがわかる。赤の平面以外の場所に存在するベクトルの戻り先が存在しないのでこれはこれで困ってしまった。

図で(2,3)行列のような場合はこんな感じになる
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移り先 f(x) の 3 から x へ戻るとき、この 3 は 2 か 4 どちらから移ってきたかわからず困る。こういう状況を全射

(3,2)行列の場合は
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移り先から戻り先は1対1対応だけど、 f(x) の中にある i や 10 に対応するものが戻り先にはないケース。こういう状況を単射

逆行列で嬉しい場合は1対1対応で、移り先のベクトルに対して唯一の戻り先があること
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単射であり、全射。二つ合わせて全単射という

雑だけど(m,n)行列において m < n でも m > n の場合でも困ることがわかった。そのため(n,n)という正方行列のがいいことになる。
正方行列でもその1でメモした基底の条件を満たすような正方行列じゃないといけないことに注意する
正方行列で写像した基底の移り先が実はどの基底ベクトルも同じ方向を向いていたとかだったらどっかしら情報が欠落して元に戻れなくて困る。すなわち逆行列が存在しない。正方行列で逆行列が存在する行列を正則行列と呼ぶ。


まとめるとして
* (m,n)行列による写像は移すベクトルの基底の移り先を示す、または n次元空間のものを m次元空間へと写像する。
* 写像した先から元に戻るためには写像した行列が正則行列であれば元に戻れる。

逆行列が存在するかどうかにも基底は関わっているし、基底がめちゃめちゃ重要なのがわかる。

でも逆行列が存在するとか、任意でとった基底の組が基底としての条件を満たしているとかはどうやって判断するのだろうか。

謎は深まるばかり